M-1に見る「管理不能な要素」の難しさ〜完成度では測れない世界で成果を出すということ〜

昨日、M-1グランプリ(2025)が開催され、ダークホース的な存在だった「たくろう」が見事に優勝しました。おめでとうございます。
優勝候補と言われていた、真空ジェシカ、ヤーレンズ、エバースの3強を押しのけての快挙でした。
大阪を拠点として活動しているということで、ミルクボーイ同様、今後の活躍を期待しています。
さて、私はフリーランスのコンサルタントなんですが、M-1グランプリを見ていると、毎年あらためて思うことがあります。
この大会は、お笑いの優劣を決める場であると同時に、
多くの管理不能な要素の中で成果を出す難しさを秘めた究極のプレゼンテーション大会
だということです。
ネタの出来、不出来だけで語れるなら、話は簡単ですが、実際にはそうならないところが、非常に興味深いのです。
成果を左右する「管理不能な要素」
M-1には、事前にコントロールできない要素が無数に存在しています。
・出番のくじ運
・直前のコンビのウケ具合
・会場の温度・空気感
・審査員との相性・期待値
どれも、本人たちの努力とは切り離された領域です。
どれだけネタの完成度を上げても、ここだけは自分たちの努力で管理することはできません。
それでも舞台に立つ以上、結果は容赦なく数値化されていきます。
笑いの量、点数、票数という、極めて分かりやすい形で。
特に印象的だったのは、高い完成度を示しながら、最終的に評価に結びつかなかったケースです。
失敗したわけではありません。ただ「その場」と噛み合わなかったというだけです。
例えば、優勝候補の筆頭だと言われていた真空ジェシカ。
彼らは、安定した笑いを引き起こしていました。
ところが、直前にはエバースが同じ車のネタをしていて、かなりの高得点を叩き出していました。
「あ、また車のネタか。」
観客や審査員の期待値は無意識のうちに上がっていきます。
これはさすがに、やりにくいでしょう。
逆に、決勝戦を1位通過したエバースは、準決勝で盤石だった腹話術のネタで最終決戦に挑みました。
ネタの中身も演技力も安定感も抜群の出来でした。
ところが最後の最後に「たくろう」の独特の空気感に持っていかれ、9人中0票で第3位に沈みました。
完成度が高いほど、環境に左右される理由
皮肉な話ではありますが、完成度が高いものほど、環境との相性に左右されやすいと言われています。
M-1で言えば、その昔、和牛というコンビが完成度の高い漫才を披露しておきながら、3年連続で準優勝という記録もありました。
設計が緻密であればあるほど、前提条件が少し崩れたときの影響が大きくなりがちなのです。
これは、コンサルティングの現場でも同じことです。
論理的に完璧な提案・ロジックほど、前提となる組織状況や経営者の心理がズレた瞬間、急に機能しなくなります。
「正しいかどうか」と「採用されるかどうか」は、別の軸の話なのです。
コンサルは「正解」を出す仕事ではない
コンサルの仕事は、正解を提示することではありません。
どちらかと言えば、その場で動く解を提示することに近い感じです。
・経営者の関心
・社内政治
・タイミング
・空気感
これらを無視して、いくら正しい分析を積み上げても、意思決定にはつながらないのです。
M-1で求められているのも、まさに同じ能力だと思っています。
自分たちの反復する努力や着眼点などのネタの完成度だけでなく、その瞬間の場をどう対応していくかが問われているのです。
AIでは代替できない判断領域
近年、コンサルの仕事はAIに代替されると言われるようになってきました。
コンサルは資料を作ることが多いため、若手の仕事であるパワーポイント作成や議事録などは代替されるでしょう。
実際、分析、資料作成、情報整理の多くは、すでにAIの方が速く正確です。
しかし、M-1を見ていると、はっきりするのは、
管理不能な要素を前にしたとき、どう振る舞うか
という判断は、まだAIの得意領域ではないということです。
空気が重いと感じた瞬間に、どこまで崩してよいものなのか。
想定とズレたときに、押し切ればいいのか、さっと引くべきなのか。
この判断には、並々ならぬ経験と身体感覚が必要になってきます。
数値化できないものを、引き受ける覚悟
そう意味においては、M-1は、実に残酷な大会です。
完成度が高くても、結果が出るとは限りません。
努力と評価が一致しない瞬間が、容赦なく、華やかな画面の中に、映し出されていきます。
ただ、だからこそ、私は、この大会には価値があるのだと考えています。
管理不能な要素を排除するのではなく、すべて引き受けたうえで舞台に立つという姿勢そのものが、問われているからです。
コンサルも、ビジネスも、そしておそらくAI時代の仕事も同じだと思っています。
ネタや資料を正しく作ることは、もはや前提条件にすぎません。
前提条件をクリアした先、その場で相手の心に届く形にどのように変換できるかどうか。
ここで、差が生まれます。
M-1は、その現実を、毎年、これ以上ないというほど、分かりやすく、突きつけてくれます。
管理不能なものを受け入れる、究極のプレゼンテーション大会だと言えるでしょう。
















ディスカッション
コメント一覧
結構新しいことをやったかどうかが大きく影響しているように思う。
決勝の3組だと甲乙つけがたいほど面白いわけで、無理やり差を見つけだろうと思ったらいままであまりなかったような笑いだったかどうかになってしまうのかなと
じつき様、コメントありがとうございます。
最終決戦は3組ともレベル高かったですよね…。新しいことに挑戦したか。おっしゃるように、これも評価軸ですよね。
この軸は、自分の得意ネタではなく、リスクをとって新規ネタを選ぶということで、自分で管理することができる要素なのかもしれませんね。
たくろうの場合どちらがボケかツッコミかもはや概念がない感じで、エバースもツッコミの方がおもろいことを言う感じで
ドンデコルテは…。
ああドンテコルテは、そうっすね。結構王道ですね。でも面白いからいいということで
(笑)