【家族信託で防ぐ認知症の財産凍結】父6000万円・母1000万円・子2人のリアル事例

私は前回、1次相続と2次相続の話を書きました。
この続きの話となります。
相続の話をすると、どうしても
「誰がいくら相続するのか?」
「税金はいくらになるのか?」
といった部分に意識が向きがちです。
しかし、実際の現場で本当に家族を困らせるのは、税金ではなく
「財産を動かせなくなるリスク」
です。
特に、認知症が絡むと、預金の引き出し、自宅の売却、契約更新などが一切できなくなり、家族の生活が完全にストップすることがあります。
こうした認知症による「財産ロック」は一般家庭ほど深刻です。
【事例】父が元気、母が認知症、子ども2人の家庭
今回のイメージは次のケースです。
・父(80):元気。自宅3000万円+預金3000万円=合計6000万円
・母(78):すでに認知症が進行。預金1000万円
・子ども2人:それぞれ独立生計(生活するだけで手一杯で余裕はない)
どこにでもある家族構成ですが、実はこの構成こそ、最も詰みやすいパターンとなります。
理由は4点です。
・母の財産1000万円は、すでに認知症なので事実上「動かせない状態」
・施設費や介護費は、父の財産から出すしかない
・もし、父も認知症になれば、父の財産6000万円も凍結してしまう
・結果として、7000万円超の財産が一切使えなくなる
というリスクの高い状態だからです。
※母の1000万円は、母の死亡後、「子ども2人の相続財産」として動く形になり、現在は実務上、ほぼ凍結に近い扱いとなります。
認知症になると何が止まるのか?
法律上、本人の「意思確認」ができなければ、多くの手続きが無効になります。
・銀行預金の引き出し
・自宅の売却
・有価証券の売買
・老人ホームへの入居契約
すべて本人の意思確認が必要で、家族でも勝手にできません。
この事例の家庭では、母の1000万円はすでにほぼ凍結状態。
もし、父が倒れると、実家の売却や施設費の捻出もできず、
成年後見制度に頼らざるを得ない状況になります。
成年後見制度は「最後の砦」であって理想的な形ではない
成年後見制度には次のようなデメリットがあります。
・家庭裁判所の監督下で自由度が低い
・専門職後見人が選ばれるケースが多い(報酬が毎年20〜40万円)
・自宅売却には裁判所の許可が必要
・本人が亡くなるまで制度が続く
・後見人の許可が必要となるため、家族が自由にお金を使えない
これらの理由から、多くの家庭が
「もっと早くから準備しておけばよかった…」
と後悔することになるのです。
そこで実力を発揮するのが「家族信託」
そこで、実力を発揮するのが「家族信託」になります。
最近、CMや新聞などでも、よく聞きますよね。
家族信託とは、上記の事例において、
「父の財産6000万円の管理・運用・処分の権限を、信頼できる子どもに託す契約」
のことを指しています。
父は所有者のままで、子どもが管理者(受託者)となり、必要な手続きをスムーズに進めることができるようになります。
家族信託を組むことで得られるメリット
・父が認知症になっても、預金が凍結しない
・父母の施設費や生活費を、子どもが管理して支払うことができる
・必要に応じて、自宅も売却できる
・母の財産は母の死亡後に相続されるため、父の6000万円を守る意味が大きい
・子ども2人の間でのトラブルを防止できる
・1次相続から2次相続の流れまでの全体を設計できる
今回のように、すでに母の財産が動かせない家庭では、
家族信託は父の財産を守るための唯一の現実的な手段になることも多いのです。
家族信託のデメリット
家族信託は、メリットが大きい一方、次のようなデメリットもあります。
①費用がそれなりに発生する
・設計費用:20〜50万円
・公正証書:3〜8万円
・登録免許税:評価額の0.3%
・専門家の立ち会い:10〜30万円
すべてを合わせると、100万円近くかかるケースもあります。
②契約後の管理責任がある
受託者(子ども)は、通帳管理や収支共有など、最低限の運用が必要となります。
③なんでも信託できるわけではない
年金や一部の保険商品など、信託に向かない財産もあります。
【結論】認知症が出てからでは遅い…動ける今こそ準備を始めよう
上記の事例においては、父が元気な今こそ、家族信託を検討するタイミングです。
母の財産1000万円はすでに動かすことができない以上、父の6000万円を凍結させないことが家族の生命線となります。
家族信託は節税目的の制度ではなく、家族の生活を止めないための、実務的な防災装置とも言えるでしょう。
相続の前に必ず訪れる
「お金が動かなくなる期間をどう乗り切るのか?」
その答のひとつが、家族信託なのです。
















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