AIは学習する…ただ認知症も進行する…認知症介護はAIだけでは解決できないのでは?

最近の生成AIの進化には目を見張るものがあります。
次はロボットとAIが融合した「フィジカルAI」の時代とも言われています。
介護の現場でも、人手不足の解消や見守り、身体介護など、大きな期待が寄せられています。
私自身も、その可能性には期待しています。
しかし、認知症介護だけは、AIを導入すれば簡単に解決する問題ではないように感じています。
身体介護と認知症介護は全く違う
身体介護には、ある程度の手順があります。
もちろん経験や技術は必要ですが、改善を積み重ねやすい世界です。
一方、認知症の方との会話には、ほとんどマニュアルがありません。
例えば、
「石原裕次郎って知ってる?東京都知事だったんよ。」
と言われたとします。
訂正すると怒るかもしれません。
話を合わせても、同じ話が延々と続くかもしれません。
話題を変えようとしても怒る。
逆に、聞き役に徹しても「ちゃんと聞いていない」と思われることがあります。
何が正解なのか、実は、誰にも分かりません。
「正解がない」のではなく「正解が変わる」
認知症介護が難しいのは「正解がない」からではありません。
もっと正確に言えば、その瞬間ごとに最適な対応が変わるからです。
昨日うまくいった対応が今日は通用しない。
朝は笑って聞いてくれた話が、夕方には怒り出す。
五分前の最適解が、今の最適解とは限りません。
だから介護現場には万能なマニュアルがありません。
AIは学習するが、認知症も進行する。
AIは利用者を学習します。
好みや話し方を覚え、その人に合わせた会話ができるようになるでしょう。
しかし、認知症も時間とともに進行します。
昨日まで覚えていたことを忘れる。
家族の顔が分からなくなる。
好きだった話題に興味を示さなくなる。
つまり、AIは学習する。
しかし認知症も進行する。
この二つは同時に進んでいきます。
学習すればするほど賢くなるという、AIの基本的な考え方だけでは対応しきれない世界がそこにはあります。
認知症だけを見ていても、本質は見えない
さらに難しいのは、認知症だけが会話を左右しているわけではないことです。
身体の調子も、大きく影響します。
体調が良い日は、同じ話を何度も笑顔で繰り返します。
しかし、身体がしんどい日は、同じ内容が愚痴になったり、怒りになったりすることがあります。
ところが、それが認知症によるものなのか、身体の不調によるものなのかは、人間でも簡単には分かりません。
本人が「今日は膝が痛い」「寝不足だ」と言葉で表現してくれるとは限らないからです。
顔色や表情、話し方、歩き方…。
様々な情報を観察しながら推測するしかありません。
AIが表情や音声を分析できるようになったとしても、その変化の原因まで正確に見極めることは、決して簡単ではないでしょう。
本当に疲れるのは、介護する側
認知症介護で一番つらいのは、正解が分からないことではありません。
その状況が毎日続くことです。
話を聞いても怒る。話を広げても怒る。黙っていても怒る。そして翌日は、また違う反応になる。
これを何時間も、何日も、何年も続ければ、介護する人は疲れていきます。
介護疲れや介護離職が社会問題になるのも、決して不思議なことではありません。
AIに期待していること
だからといって、私はAIに否定的なわけではありません。
むしろ期待しています。
夜中の話し相手になる。見守りを代わる。介護する家族が一時間でも休める。
それだけでも、大きな価値があります。
AIが認知症を解決することは難しいかもしれません。
しかし、介護する人の負担を少しでも軽くすることはできるはずです。
おわりに
生成AIやフィジカルAIは、これからますます発展していくでしょう。
その流れは歓迎すべきことだと思います。
ただ、認知症介護は「AIを導入すれば解決する」というほど単純ではありません。
会話に模範解答もありません。
しかも、その人の認知症の進行、その日の体調、その瞬間の気持ちによって、最適な対応は変わり続けます。
だからこそ、認知症介護はAIにとって最も難しい分野の一つなのかもしれません。
それでも私は、この難しい分野だからこそ、AIには挑戦してほしいと思っています。
認知症をなくすためではありません。
介護する人が、少しでも笑顔で介護を続けられる社会に近づくために…。




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