うつ病の原因は「最後の一滴」ではなかった…メンタル・パワハラについて私が振り返って思うこと

はじめに
「うつ病になったきっかけは何でしたか?」
そう聞かれることがあります。
私も当時は「最後(直前)に起きた出来事」が原因だと思っていました。
しかし、時間が経って冷静に振り返ると、実際にはそうではなかったように思います。
原因は一つの出来事ではなく、長年にわたって積み重なったストレスでした。
今日は、私自身の経験を振り返りながら、そのことについて書いてみたいと思います。
上司の頭の中を再現する毎日
今から20年ほど前、私は大手コンサルティング会社で全国各地を飛び回っていました。
当時は今よりも厳しい企業文化が残っており、今で言うパワハラのような指導も珍しくありませんでした。
特につらかったのは、PowerPointの資料作成です。
正解があるわけではありません。
だからこそ、「上司が頭の中で思い描いている資料」を再現することが、何より難しかったのです。
自分が正しいと思うロジックではありません。
「上司はこう考えているのではないか。」
それを必死に想像しながら資料を作る毎日でした。
しかも、その考えは打ち合わせのたびに変わります。
夜遅くまで方針を決め、翌朝にはまた打ち合わせ。
寝る前も、
「上司の言いたいことは、あんな感じだったかな。」
そんなことばかり考えていました。
資料が思っていた内容と違えば、その場で怒鳴られ、何度も修正を命じられることもありました。
夢の中にまで上司が出てくることもあり、今振り返れば、当時から適応障害のような状態になっていたのかもしれません。
社内政治で、はしごを外された経験
別の案件では、さらに苦しい経験をしました。
クライアントの経営層と何度も議論を重ね、
「Aという方向性で進めましょう」
と合意を得ながら、丁寧にプロジェクトを進めていました。
ところが途中で営業部門が入り、いつの間にか話はBという方向へ変更されていました。
経営層もBへ方向転換。
それを知らずにAを進めていたのは私だけでした。
結果として、
「あのコンサルは何をやっているんだ。」
そんな空気になってしまいました。
一度そういう評価になると、その後どれだけ建設的な提案をしても、
「あいつはダメだ。」
という見方が先に立ってしまいます。
客先に常駐していた私は、毎日その空気の中で仕事を続けなければなりませんでした。
頭の中が張り裂けそうになり、これもまた小さなダウンにつながりました。
私は仕事が嫌だったわけではありません
誤解してほしくないのは、私は仕事そのものが嫌だったわけではありません。
コンサルタントとして高い報酬をいただいている以上、自律的に考え、成果を出したいという思いは常に持っていました。
それなりに、経験や知見もあり、多少の柔軟性はもっていると自覚していました。
しかし、自分ではコントロールできない外圧だけは、どうすることもできませんでした。
上司の考え。社内政治。人間関係。評価の変化…。
こうした要素は、自分が努力しても解決できるものばかりではありません。
そして、そのストレスは少しずつ積み重なっていったのだと思います。
うつ病の原因は「最後の出来事」ではなかった
実際にうつ病を発症したとき、最後(直前)の出来事だけを見ると、それほど大きなストレスではありませんでした。
クライアントから依頼された業務範囲が少し広がり、タスクが少し増えた。
客観的に見れば、その程度のことです。
だから当時も、
「そのくらいで?」
と思われたかもしれません。
でも、今なら分かります。
私の心のコップは、その時点ですでにいっぱいだったのです。
長年積み重なったストレスによって、コップの水はほとんど満杯になっていました。
そこへ最後に、ほんの少しだけ水が注がれた。
それだけで、水はあふれてしまいました。
うつ病の原因は、その最後の一滴ではありません。
何年もかけて積み重なった、無数の小さなストレスだったのだと思います。
今だから思うこと
現在はフリーランスとなり、フルタイムで働く生活はしていません。
もちろん、コンサルという仕事は嫌いではありません。
だからこそ、心や体を壊すほど働くことはしないようにしています。
また、企業全体を見ても、パワハラへの意識は以前より高まり、働く環境は少しずつ改善されてきたと感じています。
もちろん、すべての職場がそうとは言いません。
それでも、私が若かった頃よりは、働きやすくなっている会社も増えているでしょう。
私は、もうあの頃の働き方には戻りたいとは思いません。
人生は仕事だけではありません。
心にも余白が必要です。
私が「余白」や「制御可能性」を大切にするようになったのも、こうした経験があったからです。
もし今、小さなダウンを何度も繰り返している方がいるのであれば、「まだ大丈夫」と無理を続ける前に、一度立ち止まってみてください。
心のコップは、ある日突然あふれるのではありません。
気づかないうちに少しずつ水がたまり、最後の一滴であふれてしまうこともあるのです。
私は今でも、仕事そのものが人を壊すとは思っていません。
人を壊すのは、自分ではどうにもできない外圧が積み重なり「もう逃げ場がない」と感じる状態なのではないでしょうか。





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