認知症の家族がいる場合、遺言がないと何が起こるのか

はじめに
相続というと、多くの人は「相続税」を思い浮かべるかもしれません。
しかし実際には、税金以上に大きな問題になることがあります。
それが「相続手続き」です。
特に、
・高齢の夫婦
・認知症の家族がいる
・不動産を保有している
といった家庭では、相続税よりも先に、手続きそのものが止まってしまうことがあります。
今回は、よくある家族構成を例に、遺言がある場合とない場合の違いについて考えてみたいと思います。
よくある家族構成
例えば、
・父
・母(認知症)
・子どもA、子どもB
という家庭があるとします。
父が亡くなり、
・自宅
・預金
・株式
などの財産を残したとします。
遺言がない場合
父が亡くなった場合、相続人は
・母
・子どもA
・子どもB
になります。
通常であれば、相続人全員で遺産分割協議を行い、
「誰が何を相続するのか」
を決めることになります。
しかし、このケースでは母が認知症です。
認知症の程度にもよりますが、意思能力がないと判断されると、遺産分割協議に参加することができません。
すると「母の代わりに誰かが判断する」必要が出てきます。
ここで登場するのが成年後見人です。
家庭裁判所へ申立てを行い、成年後見人を選任し、その後に遺産分割協議を進めることになります。
つまり、
父の死亡 → 成年後見人選任 → 遺産分割協議 → 相続手続き
という流れになります。
相続税の問題がなくても、手続きに時間と労力がかかる可能性があります。
遺言がある場合
一方、父が公正証書遺言を残していた場合はどうでしょうか。
例えば、
・自宅は子どもA
・預金は母
・株式は子どもB
など、相続先が明確に指定されていたとします。
この場合、原則として遺言に従って手続きを進めることができます。
遺産分割協議そのものが不要になるため、認知症の母がいることで手続きが止まるリスクを大きく減らすことができます。
もちろん個別事情によって例外はありますが、相続人全員で話し合いを行う必要がなくなることの効果は非常に大きいと言えます。
遺言は残された家族のためだけではない
また、遺言の効果は残された家族だけにあるわけではありません。
遺言を作成する本人にとっても、
「自分が亡くなった後、家族が困らないだろうか」
という不安を減らすことができます。
特に認知症の配偶者がいる場合、遺言がなければ成年後見人の選任や遺産分割協議など、さまざまな手続きが発生する可能性があります。
一方で、遺言によって財産の承継先を明確にしておけば、
「妻に必要な生活資金を残す」
「子どもたちに余計な負担をかけない」
といった自分の意思を形にすることができます。
遺言は、残された家族のためだけではなく、自分自身が安心するための準備でもあるのです。
相続税よりも先に手続きが止まることがある
私は以前まで、相続対策といえば、
・節税
・生前贈与
・生命保険
などをイメージしていました。
しかし実際には、
「認知症の家族がいる」
というだけで、手続きの難易度は大きく変わります。
税金の話以前に、相続手続きそのものが進まなくなることもあるのです。
おわりに
遺言というと「財産の分け方を決めるもの」というイメージがあるかもしれません。
もちろん、それも重要です。
しかし、もう一つ大切な役割があります。
それは、残された家族の手続きをスムーズにすることです。
そして同時に、自分の意思を家族へ残し、自分自身も安心することです。
特に認知症の家族がいる場合、遺言の有無によって相続後の負担は大きく変わる可能性があります。
相続税対策だけでなく、
「残された家族が安心して手続きを進められるようにする」
「自分が亡くなった後の不安を減らす」
という視点からも、遺言について考えてみる価値はあるのではないでしょうか。
相続は、亡くなった後に始まるものではありません。
元気なうちに準備しておくことで、残された家族も、そして自分自身も安心できるものなのだと思います。





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