高校数学は社会で使わない?〜数学好きのコンサルタントがそう思わない理由〜

はじめに
学生時代「数学なんて社会に出たら使わない」という言葉を何度も聞きました。
確かに私自身、仕事で因数分解をすることはありません。
三角関数の公式を暗記しているわけでもありません。
微分方程式を解くこともありません。
しかし、だからといって数学を使っていないかと言われると、それは少し違う気がしています。
私はフリーランスの業務改革コンサルタントです。
需要予測やサプライチェーン、経営改善などに長年携わってきました。
また、不動産投資や法人経営も行っています。
私は学生時代から数学が好きで、数学検定1級も取得しました。
私は日常的に数学の公式を使っているわけではありません。
しかし今振り返ると、数学そのものよりも、数学的な世界の見方の方が役立っている気がします。
今回は、私が感じている「数学の面白さ」について書いてみたいと思います。
ベクトルは「どちらへ向かうのか」を考える学問
学生時代、ベクトルは矢印でした。
大きさを求めたり、内積を計算したり。
しかし社会に出てから気付いたことがあります。
人生の問題の多くは、大きさではなく方向の問題なのです。
例えば、
・年収1500万円で毎日終電
・年収700万円で健康と自由時間を確保
どちらが良い人生でしょうか。
答えは人それぞれです。
しかし重要なのは、年収という数字だけでは判断できないということです。
人生には、
・健康
・自由
・家族との時間
・継続可能性
といった別の軸があります。
私はうつ病を経験し、独立し、週3日ワークを目指すようになりました。
振り返ると、それは収入だけを最大化する生き方から、人生全体の方向性を考える生き方への変化でした。
ベクトルとは、単なる矢印ではありません。
「どちらへ向かうのか」
を考えるための道具だったのです。
行列は「関係性」を考える学問
高校や大学で習う行列は2×2や3×3です。
しかし現実社会は違います。
需要が変わる。
生産が変わる。
在庫が変わる。
物流が変わる。
利益が変わる。
すべてがつながっています。
私が携わってきたSCMの世界は、まさに巨大なN×N行列です。
学生時代の2×2行列は、その巨大な世界を理解するための模型だったのだと思います。
行列の本質は計算ではありません。
複雑な関係性を整理することです。
複素数は「新しい軸」を追加する学問
最初に、虚数を学んだ時、
「こんな数字、本当に必要なのか」
と思いました。
しかし今は違います。
複素数の本質は、新しい軸を追加することだと思っています。
算数や高校数学で扱う実数の世界は、一本の物差しで測る世界です。
しかし複素数では、その物差しと直交する新しい物差し(虚数)が追加されます。
それまで見えていなかった方向が見えるようになるのです。
私にとって会社員時代は、収入や評価という一本の物差しで世界を見ていた時代でした。
しかし病気を経験し、健康や自由という新しい物差しが加わりました。
今振り返ると、それは実数の世界から複素数平面へ移ったような変化だった気がします。
複素数とは、説明できない現象に出会った時、
「その物差しだけで考えるのをやめてみよう」
と教えてくれる考え方なのかもしれません。
微分は「変化」を見る学問
私たちは現在の数値ばかり気にします。
売上はいくらか。
在庫はいくつか。
アクセス数はいくつか。
しかし本当に重要なのは、増えているのか、減っているのかです。
私は微分の本質は、
「未来の方向を見ること」
だと思っています。
さらに面白いのは変曲点です。
一見すると順調に伸びているように見える。
しかし、その伸び方が変わり始めている。
後から振り返ると「あそこが転換点だった」ということがあります。
会社員時代の働き方。
大阪の再開発。
企業の業績。
変曲点は未来を先読みするための重要なサインなのです。
積分は「積み上げ」を見る学問
私はブログを500記事以上書いてきました。
1記事では何も変わりません。
10記事でも変わりません。
しかし500記事になると、思想の輪郭が見えてきます。
不動産も同じです。投資も同じです。勉強も同じです。
積分とは、小さなものを積み上げる考え方です。
私は積分を、
「時間を味方につける学問」
だと思っています。
三角関数は「波」を理解する学問
需要予測には波があります。
景気にも波があります。
健康にも波があります。
人生にも波があります。
好調な時期。不調な時期。その繰り返しです。
三角関数(sin、cos、tan)は、その波を理解するための言語です。
私は安全在庫や余白も、同じ考え方だと思っています。
需要や忙しさの波が来ることを前提に準備しておく。
それが三角関数的な発想です。
統計は「不確実性」を扱う学問
未来は予測できません。
来月の需要も。株価も。天気も。そして、人生も…。
しかし全く予測できないわけでもありません。
だから統計を使います。
統計とは未来を当てる学問ではありません。
外れても困らないようにする学問です。
私は需要予測の仕事を長年やってきましたが、統計とは「当てる技術」ではなく「備える技術」だと思っています。
テイラー展開は「まず近似してみる」という考え方
学生時代は難しい公式にしか見えませんでした。
しかし社会に出てから考え方が変わりました。
現実は複雑です。
だから最初から完璧に理解することはできません。
まずはざっくり考える。
必要なら項を追加する。
人生設計も同じです。
未来を完全に予測することはできません。
だからその時点で見えている範囲で近似する。
テイラー展開とは、そんな現実的な思考法なのかもしれません。
フーリエ変換は「複雑さを分解する」考え方
私はコンサルタントとして、問題解決よりも先に問題分解を行います。
複雑な現象は、そのままでは理解できません。
だから分解するのです。
売上。在庫。物流。人員。需要。
フーリエ変換も本質的には同じです。
複雑な波を単純な波に分解する。
私はフーリエ変換を知った時、
「数学とは複雑な世界を理解するための技術だったのか」
と思いました。
対数は「レンズを変える」学問
昔、需要分布のグラフ作成で苦労している若手社員がいました。
最大値だけが飛び抜けていて、他が潰れて見えないのです。
そこで私は一言「対数(log)取ったら?」と言いました。
すると一気に見やすくなりました。
対数とは計算ではありません。レンズの変更です。
見えなかったものを見えるようにする。
私は今でもそう考えています。
最適化とは「正解探し」ではない
学生時代の数学には答えがありました。
しかし社会には答えがありません。
人生も同じです。
どの会社が正解だったのか。
どの家が正解だったのか。
どの選択が正解だったのか。
誰にも分かりません。
だから私たちは試行錯誤します。
遺伝的アルゴリズムのように。
良さそうなものを残し、修正しながら進むのです。
人生も仕事も、完全な最適解を求めるゲームではありません。
より良い解を探し続けるゲームなのだと思います。
おわりに
学生時代の私は、数学を計算する学問だと思っていました。
しかし今は違います。
ベクトルは方向を見る。
行列は関係を見る。
複素数は新しい軸を見る。
微分は変化を見る。
積分は蓄積を見る。
三角関数は周期を見る。
統計は不確実性を見る。
テイラー展開は近似する。
フーリエ変換は分解する。
対数はレンズを変える。
数学とは公式の暗記ではなく、世界を見るためのレンズの集合体だったのです。
私は今でも数学の問題を解くことはほとんどありません。
しかし、数学的な世界の見方は、仕事でも、投資でも、ブログでも、人生設計でも、毎日のように使っている気がします。
数学は答えを求める学問だと思っていました。
しかし今は違います。
数学は、世界を単純化したり、分解したり、別の角度から見たりするための道具でした。
数学とは、世界の見方を増やす学問だったのです。






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