DXは必要だけど移行が急すぎる…ITコンサルの私が感じた「人間側の移行設計」の弱さ

はじめに
私は、フリーランスのコンサルタントです。
約27年もの間、IT・DX系のコンサルティングに携わってきました。
ERP導入、業務改革、SCM、システム統合…。
いわゆる「DX(デジタルトランスフォーメーション)推進側」の仕事です。
その一方で、最近、強く感じていることがあります。
それは、
「日本のDXは、少し移行が急すぎるのではないか」
ということです。
私は決して、
「デジタル化反対」
「DX不要」
と言いたいわけではありません。
むしろ、人不足が進む日本において、DXやAI活用は避けて通れないと思っています。
ただ、現場を見ていると、
「システム導入」ばかりが先行し、「人間側の移行」が置き去りになっているように感じるのです。
今回は、家族のスマホ機種変更を通じて、あらためて感じたことを書いてみたいと思います。
高齢者にとって、スマホは「電話」ではない
先日、後期高齢者の母親のスマホ機種変更を行いました。
その中で、私は強い違和感を覚えました。
店員さんは悪気なく、
・QRコード
・LINE
・アプリ更新
・高性能カメラ
・動画機能
・ライブ撮影
などを次々と説明していきます。
ただ、母親は、
「電話しか使わない」
のです。
LINEも使いません。写真も撮りません。動画も撮りません。
スマホを便利ツールとして使っている感覚がそもそもありません。
母親にとってスマホとは、
「仕方なく持たされている電話」
なのです。
「スワイプ」ができない現実
義父・義母も同じです。
3G停止に伴い、しぶしぶ、ガラケーからスマホへ移行しました。
ただ、実際には、全く使わなくなりました。
理由は単純で「操作できない」からです。
3Gガラケー携帯のままだと、そのまま使えていたと思います。
例えば、「緑のボタンを押してください」と言っても、指先が乾燥していて、うまく反応しない。
「画面をスライドしてください」と言っても、スワイプ操作そのものが難しい。
若い世代から見ると「そんな簡単なこと」かもしれません。
ただ、高齢者にとっては「そもそも身体がついていかない」のです。
これは、知識や努力の問題ではありません。
固定電話は「老化耐性」が高かった
私は最近、固定電話は実は非常に優秀なインフラだったのではないかと思っています。
東日本大震災の時にも、そう思いましたが…。
受話器を取れば話ができる。ただそれだけです。
アップデートもありません。GUI変更もありません。パスワードもありません。
一方、スマホは、
・アップデート
・認証
・QRコード
・アプリ更新
・GUI変更
・通知
・スワイプ
など、「小型コンピュータ」としての操作を要求してきます。
つまり「電話」ではなく「IT機器」なのです。
高齢者が戸惑うのも、ある意味当然だと思います。
ETCは「うまい移行」だった
私は、ETCは比較的うまくいった移行事例だと思っています。
もちろん、まだ完全ではありません。
軽トラで有人レーンを使い、領収書を受け取っている小規模事業者もいます。
ただ、ETCは、
・一般レーンを長く残した
・強制しなかった
・徐々に割引誘導した
・30年近く時間をかけた
という特徴があります。
つまり、
「旧世界を急に否定しなかった」
のです。
これが大きかったのではないでしょうか。
マイナ保険証・インボイス・完全タブレット注文…
一方で、最近のDXは少し急ぎすぎているようにも感じます。
例えば、
・マイナ保険証
・インボイス制度
・完全タブレット注文
・QRコード前提運用
など。
もちろん、制度側の理屈は分かります。人不足も深刻です。効率化が必要なのも事実です。
ただ「人間側の移行」が追いついていないように感じるのです。
例えば、優れていると言われている「資格確認証」についても、母親は、保険証の色が変わっただけで、
「もう病院に行きたくない」
と言っています。
私から見ると「カードの黄色が変わっただけ」なのですが、高齢者の中には「昨日までと違う」だけで強い不安を感じる人もいるのです。
DXで本当に重要なのは「チェンジマネジメント」
ERP導入でも同じでした。
失敗するプロジェクトは「システム導入」ばかりに注目します。
でも本当に重要なのは、
「人がどう変わるか」
です。
・なぜ変えるのか
・何が便利になるのか
・何が変わらないのか
・困った時どうするのか
これを腹落ちさせないまま、
「標準化です」
「DXです」
だけで進めると、現場は疲弊します。
残るのは、きれいな要件定義書と、誰も見ない結合テスト結果仕様書などのドキュメントだけです。
おわりに
私はDXそのものを否定したいわけではありません。
AI活用も必要だと思っています。
今後も、DX推進のITコンサルタントとして、活動していく予定です。
ただ「導入すること」と「人が使い続けられること」は別物です。
システム移行で本当に難しいのは「技術」ではなく「人間側の移行」なのだと思います。
だからこそ、もう少しだけ、
「変化の速度」を丁寧に設計してもいいのではないか。
最近、そんなことを強く感じています。






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