資産やマンションを持つ家庭がすべき相続対策4点セット!認知症になる前に…

2025年現在、少子高齢化による将来不安、給料が上がらない中での物価高に、ほとんどの国民は苦しんでいます。
全国的に都市部でのマンション価格も高騰し、持ち家保有は夢の時代になろうとしています。
これまで「相続」といえば、お金持ちの話という印象が強かったと思います。
ただ、上記背景により、富裕層という認識のなかった普通の家庭でも「相続」は関係してくる世の中になりました。
特に、高齢の両親がマンションや金融資産を保有している場合、かなりの確率で相続問題に突き当たることになります。
相続対策は今日明日でできるものではありません。
「亡くなった後」の話でもありません。
最近、悩みとして多いのが
「認知症になったときに資産をどう管理し続けるか」
という視点です。
認知症になると、不動産の売却、賃貸契約、資産組み換えなどが一切できなくなります。
さらに、銀行口座も事実上の凍結状態となり、家族の生活費の支払いに大きな支障が出ます。
そこで、本記事では、マンション等の資産を持っているプチ富裕層に向けて、認知症リスクを踏まえた現実を紹介したいと思います。
認知症になると資産が動かなくなる(銀行凍結)
認知症は、医療的な問題もありますが、経済的な観点としては、
「資産運用停止のリスク」
があることを強く認識しておく必要があります。
・不動産売却が本人の判断能力の欠如で進まない
・多額の出金・定期預金解約などが金融機関から断られる
金融機関は本人の意思確認ができないと判断すると、家族の出金依頼を断るケースが一般的です。
この段階で、口座は事実上の凍結となります。
いくら口座残高があっても、家屋は生活費や管理費の捻出に苦労することになります。
法定後見を使えば、最低限の生活費支払いは可能になりますが、節税や不動産の売却、資産の組み替えはほぼ無理だと思っておいた方がいいでしょう。
さらに、認知症発症後に法定後見を申し立てると、申立費用や後見人報酬で月額1〜3万円程度が新たに発生します。
専門職後見人が選任されれば、年間で数十万円の負担になるケースもあります。
【1】家族信託(不動産管理が止まらない)
マンションや土地などの不動産を保有する家庭では、認知症対策として、
「家族信託」
が効果を発揮するケースが多いです。
家族信託を使うと、
・不動産の管理・売却権限を家族に移し
・認知症後も資産運用を継続でき
・売却・リフォーム・賃貸契約も停止しない
という状態を作ることができます。
特に、老朽化したマンションの売却や空室対策、金融資産の組み替え調整など、認知症後も柔軟な資産運用を続けたい家庭にとって、非常に相性の良い制度になっています。
この家族信託は、専門家への設計費用が数十万円から百万円前後と、費用はやや高額です。
ただ、不動産が動かなくなるリスクを考えると、見方によっては、費用以上の効果がある制度とも言われています。
【2】任意後見と法定後見:まず違いを理解しよう
①任意後見:生活面を支える仕組み
任意後見は、本人が元気なうちに
「信頼できるこの人に管理を任せたい」
と後見人を指定する制度です。
認知症が進むと契約が発動し、後見人が生活費の管理、医療・介護契約など日常生活の面を支えます。
特徴は下記4点です。
・判断能力があるうちに自由に設計できる
・信頼できる家族を後見人に選べる
・裁判所の監督が入り、安心感がある
・ただし、不動産売却・資産運用の柔軟性はあまりない
任意後見は公正証書の作成費用が数万円ほどかかります。
さらに任意後見が実際にスタートした後は「後見監督人」への報酬として月額1〜2万円程度が発生します。
②法定後見:認知症後に始まる制度
認知症が進んでから家族が申し立てる後見制度です。
裁判所が専門職後見人を選ぶことも多く、資産のほぼが最優先とされるため、動かせる幅は極めて狭くなります。
特徴は下記3点です。
・不動産売却には裁判所の許可が必要
・相続対策や節税目的では認められない
・信頼できる家族が資産管理に関われないケースが多い
法定後見は申し立て費用は比較的安い一方、後見人報酬は継続的に発生することに注意しましょう。
特に司法書士や弁護士など専門職後見人が選ばれると、年間20〜40万円ほどの負担になることもあります。
法定後見は任意後見よりも後手に回ってしまうイメージです。
※このため、不動産を保有する家庭では、任意後見だけでは不十分です。
家族信託で「動かせる資産」を確保し、任意後見で「生活面の管理」を支えるという二本立てが現実的です。
【3】資産管理法人(プライベートカンパニー)の活用も視野に
不動産や金融資産が多い家庭では、
資産管理法人(合同会社・株式会社)
を作る選択肢も有効です。
特徴は下記5点です。
・不動産を法人名義にすると認知症後も運用が継続
・子どもを役員にして早期から運営権限を移行
・役員報酬として所得分散が可能
・法人の銀行口座は凍結されにくい
・相続後もスムーズな事業承継ができる
資産管理法人を通すと、相続の際、株式や持分の変更だけで済むので、不動産の名義変更などの手間が減って楽です。
さらに、個人所有と比べて相続税の圧縮効果も期待できるため、家族信託・遺言と並ぶ第3の選択肢として、特に高額資産を持つ家庭には有効です。
ただ、この資産管理法人にも費用はかかります。
設立費用は、株式会社で20万円前後、合同会社なら10万円前後です。
毎年の会計・税務申告に20万円ほどのコストもかかります。
【4】遺言書:最終的な資産の行き先を明確に
家族信託や資産管理法人を活用しても、最終的な
「誰が何を受け継ぐか」
まではカバーしきれません。
特に下記3点については、遺言書が必須です。
・資産管理法人の株式持分の承継先
・信託に含めない預貯金や保険の行き先
・後継役員の氏名
公正証書遺言を作っておけば、形式不備の心配もなく、家族トラブル防止に大きく役立ちます。
この公正証書遺言の作成費用は、内容にもよりますが、5〜10万円前後が一般的です。
将来のトラブル防止効果を考えると、費用対効果はまぁまぁだと言えるでしょう。
専門家(司法書士・FPなど)に相談するときのポイント
家族信託、後見制度、資産管理法人などを検討する際、司法書士・弁護士・税理士・FPといった専門家に相談します。
小さな疑問でも、まず電話やメールで問い合わせるだけでも構いません。
専門家は、相談すること自体を歓迎しています。
そして、専門家の質は高いですが、さらに安心して進めるためには、次の点を押さえておくと良いでしょう。
①費用の総額が明確か
家族信託や遺言作成は、費用がまちまちです。
着手金や成功報酬、監督人報酬など、全部でいくらかかるのかを、最初に聞いておくと、予算オーバーのリスクを回避できます。
特に家族信託は設計によっては、100万円を超えるケースもあるため、見積確認は必須です。
②税務や生活設計も含めたアドバイスか
制度単体での最適解だけでなく、税務や介護費用、社会保険など全体視点でのアドバイスになっているか確認しましょう。
司法書士や弁護士だけでなく、税理士やFPとも連携してくれる専門家だと安心です。
③実績があるか
同じ資格でも、年間に扱う件数や経験に差があります。
ホームページや口コミを参考に、ある程度の実績があるかを確認しておきましょう。
④家庭事情に寄り添った提案か
家庭ごとに最適解は異なります。
事情に寄り添わず、得意分野だけで制度を勧めてくる専門家には注意しましょう。
悪意はなくても偏って提案になることがあります。
まとめ:プチ富裕層がとるべき施策は4点セット
マンションや金融資産のあるプチ富裕層にとって、認知症による資産凍結は最も避けたいリスクです。
このため、早期から、次の4つを把握しておくことが重要です。
【1】家族信託(資産を動かせるようにする仕組み)
【2】任意後見(生活・医療・介護の管理)
【3】資産管理法人(継続的な運用と承継・相続税の圧縮)
【4】遺言書(最終的な資産の分配)
いずれの対策も一定のコストはかかります。
ただ、「認知症で資産が動かなくなるリスク」や「後からの後見費用」を考えると、早めから準備しておくほうが、結果的にコストを抑えられるケースが多いような気がします。
「まだ大丈夫」と思っている今こそ準備のチャンスです。
認知症対策や相続は、急に必要になってきます。
資産が多い家庭ほど、早めの仕組みづくりが将来の安心につながります。
上記施策につなぐためにも、まずは資産や家族関係の棚卸、つまりエンディングノートの記入から始めてみてはいかがでしょうか。















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