サプライチェーンマネジメント(SCM)の実務…計画は実行の上に成り立っている!

私はSCM(サプライチェーンマネジメント)の現場を25年以上見てきた業務改革コンサルタントです。
SCM関連だけで、もう何十社もご支援させていただきました。
多くの企業では「計画精度を高めたい」という声が後を立ちません。
・需要予測の精度を上げたい
・生産計画を平準化させたい
・自動補充を行い、在庫を最適化したい
ただ、私が感じているのは、
計画を語る以前に、実行の仕組みが整っていない企業があまりにも多い
という現実です。
本来、計画とは実行の上に成り立っているものです。
基礎ができていない建物に、いくら豪華な上層階を積み上げても、いつかは必ず崩れます。
そこで今回は「実行の標準化」こそが計画精度を決めるという原則を、お伝えしていきたいと思います。
計画が悪いのではなく、データが悪い
SCMを構築しようとして、最初にぶつかる壁があります。
それは、計画の精度を上げようとしても、そもそもインプットとなるデータが安定していないという問題です。
例えばいくつか例をあげると…
・コード体系が複数混ざり合っている
・仕入実績の入力タイミングが店舗によってバラバラ
・品目ごとに入出荷のルールが異なる
このようなデータのばらつきは、そのまま計画の揺らぎになっていきます。
データが揃っていなければ、どれほど高度なロジックを使っても、成果は出てこないのです。
計画とはデータの集合です。
データの品質が揺らげば、計画も揺らぐ。
これは避けることのできない因果関係なのです。
標準化とは「ルール化」ではなく「再現性の確保」
経営層がよく使う「標準化」という言葉は、たいていの場合「ルールを増やすこと」だと誤解されがちです。
ただ、SCMにおける標準化の本質は
「同じオペレーションを誰がやっても再現できる状態をつくること」
です。
ルールを増やすのではなく、ばらつきを減らすのです。
ポイントは下記3点です。
1)すべき作業を明確にする
2)どのタイミングで実行するかを決める
3)その結果をどのようにシステムに記録するか統一する
この3点が揃えば、データの品質は驚くほど安定します。
そして、それは計画精度の安定・向上につながっていきます。
作業の揺らぎが予測不能な変動を生む
店舗や工場、物流拠点の現場で起こる「微妙なズレ」は、計画に大きな影響を与えます。
・棚卸しが1日遅れただけで在庫がおかしくなる
・入荷登録を後でまとめて行うため、日次レベルで予期せぬ在庫変動が生じる
・ピッキングの誤差が出荷実績を不正確にする
こうした小さな揺らぎが、計画の信頼性を根幹から崩れていくノイズを生み出すことになるのです。
計画の精度を上げるために必要なのは、AIでも分析力でも高度なアルゴリズムでもありません。
「現場の作業を揃えること」
まさにこれなのです。
実行の揺らぎを抑えることができれば、計画は自然と鮮明な像を描き始めるのです。
実行が整うと「計画の課題」が初めて見えてくる
多くの企業は、計画がうまくいかないと計画プロセスを変えようとします。
しかし、実際には、
「実行が整って初めて、計画の本当の課題が見える」
という順番が存在します。
実行データが安定すると、ようやく次のようなステージにたどりつきます。
・予測ロジックは妥当なのか
・在庫水準は適切なのか
・リードタイムは実態に合っているのか
この段階で初めて、計画の改善が、意味のある改善になるのです。
実行がぐらついたまま計画だけを改善しようとしても、変わるのは表面だけで根本は変わりません。
「実行→計画→実行」の循環がSCMを強くする
計画は一度作成すれば終わりではありません。
実行の結果を受け取り、再び計画に戻す。
この循環が回り続けることで、企業のSCMは徐々に強くなっていきます。
・実行:現場で作業が正確に行われ、データとして記録される
・評価:実績が計画と比較され、差異が把握される
・調整:差異の原因を特定し、計画または実行を修正する
ここで言う「調整」というのが、実務的には「需給調整」とか「S&OP」等と言われる業務になります。
改善点が多く、業務改革コンサルタントの出番の多い業務となります。
このサイクルが回り始めると、企業のSCMは急速に安定します。
逆に、この循環のない企業は、いくら会議を重ねても、どれほど効果なパッケージシステムを導入しても、在庫はコントロールできないでしょう。
SCMは「計画」と「実行」を切り離しては育たないものなのです。
計画は「花」、実行は「根」
計画は企業の知恵です。
実行は企業の生命線です。
根の浅い植物に、どれほど美しい花を咲かせようとしても、長くは持ちません。
同じように、実行が揺らいだままでは、どんな立派な計画も成果には結びつかないのです。
「計画は、実行の上に成り立っている」
これは、SCMの世界が長い時間をかけて証明してきた、普遍の原則です。
データを揃え、標準化し、再現性を保証する。
その上で計画を磨き、また実行に戻していく。
地味な活動のようですが、この「力強い循環」こそが、企業のSCMを静かに、そして確実に強くしていくのです。





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