オイラーの公式に学ぶ、混沌をシンプルに変える力…学術と実務の交差点

本記事は2021年に執筆した内容を、現在の視点で再構成したものになります。
アカデミックな世界とビジネス実務の現場。
この2つは、まるで水と油のように見えるかもしれません。
しかし、産学連携やリサーチ・コンサルティングなど、両者をうまくつなぐことは、これからの時代、ますます重要になってくると思っています。
私自身、コンサルティング実務を25年以上経験してきましたが、同時に、学術的なスキルを磨くことの大切さも実感してきました。
放送大学卒業、英語検定、簿記検定、数学検定…
等々。
学びは、現場の判断力や問題解決力を確実に深めてくれます。
今回は、そのアカデミック領域の象徴とも言える
「オイラーの公式」
を例に、ビジネス実務との意外な共通点を考えてみたいと思います。
オイラーの公式とは?
まずは、こちらの式をご覧ください。
exp(i*π)=-1
「なんじゃそれ?」
たいていの人がそう言います(笑)
ただ、物理や数学を少しでもかじった人なら、この式の美しさに惚れ込んでしまうことでしょう。
なぜなら、このたった一行の中に数学の根幹がすべて詰まっているからです。
公式に登場する5つの要素
① π(円周率)→3.14…と永遠に続く、不思議な定数
② i(虚数単位)→2乗すると-1になる、現実世界に存在しない数
③ e(ネイピア数)→自然界の増減を支配する、指数関数の基礎
④ 1(基本単位)→数の最小の基礎
⑤ -(マイナス符号)→正負の世界をつなぐ、方向性の記号
オイラーの公式には、この5つの性質の異なる要素が、驚くほど美しく1つの式に収まっています。
それが、オイラーの公式の魅力であり、「数学界のモナリザ」とまで言われている理由となります。
コンサルティング実務の現場から見たシンプルさ
先日、ある優秀な知人と次のような話をしました。
「混沌とした現場で100点が取れることはまずない。重要なのは0点を取らないことである。」
つまり、完璧を目指すのではなく、
10点でも15点でも前に進めることに価値がある
とする考え方です。
一見、低い志に見えるかもしれませんが、実務経験を重ねるほど、これは現実味を帯びてきます。
様々な利害や制約が絡んでいる複雑な現場では、すべての課題を一気に解決することはできません。
しかし、優先順位をつけて、前提をおいて、ひとつずつ
「シンプルな単位」
に分解し、順番に解いていけば、着実に前には進んでいきます。
0点ではなく、15点でもいい。
その積み重ねが100点につながっていくのです。
オイラーの公式とコンサルティング実務の共通点
オイラーの公式は、数学の複雑な世界を、わずか5つの要素で表現しました。
同様に、コンサルティングの現場でも、複雑な状況をシンプルな課題構造に落とし込むことが重要です。
例えば:
・それは、ヒト・組織の問題なのか、業務プロセスの問題なのか、システムの問題なのか?
・それは、品質の問題なのか、コストの問題なのか、納期の問題なのか?
・それは、組織伝統の問題なのか、政治的な問題なのか、人間間の好き嫌いの問題なのか?
このように、複雑な現象を少数の構成要素に還元していくコンサルティング現場での思考プロセスは、まさにオイラーの公式の思想そのものです。
異なる概念を「一つの関係式」にまとめあげる力。
それこそが、アカデミックにも実務にも共通する「知の統合・分解力」です。
学問と実務をつなぐ「知的感性」
ビジネス実務の現場は、常に不確実で、正解がありません。
一方、アカデミックの世界は、明確な理論と体系を重んじています。
この2つを行き来することで、論理と思考が磨かれていくわけです。
そして何より
「美しい構造を見抜く感性」
が養われます。
オイラーの公式を通じて私が感じたのは、
「シンプルとは、要素を減らすことではなく、本質だけを残すこと」
という真理です。
コンサルティングもまた同じです。
現場の複雑さを削ぎ落とし、本質をつかむ。
そのとき、ビジネスの世界にも「数学的な美」を見出すことが可能となるのです。
終わりに
オイラーの公式は、一見ビジネスとは何の関係もないように見えます。
ただ、その本質は「異なる要素を、ひとつの秩序にまとめ上げる」ということだと思っています。
これはまさに、コンサルティング実務の核心でもあります。
私にとって、オイラーの公式の美しさは、
「混沌をシンプルに変える力」
そのものなのです。
そして、これらの視点は、日々の課題解決やチームマネジメントにも通じています。
複雑さを恐れず、構造を見抜くこと。
それが私のコンサルティング実務の原点です。















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